乳腺症について

乳腺症とは、卵巣ホルモンの変動に長年さらされた乳腺に生じた経年変化(老化)を総称したものです。

乳腺症

乳腺症とは、卵巣ホルモンの変動に長年さらされた乳腺に生じた経年変化(老化)を総称したものです。病理組織学的には、乳腺間質の線維化(乳腺の退化)、部分的な乳腺の増殖という相反する2つの現象が観察されます。嚢胞(乳腺の隙間に水がたまったもの)が同時に存在することも多く、嚢胞も乳腺症の一種であると考えられています。
乳腺症(線維嚢胞性乳腺症)は、乳腺が線維性・嚢胞性の変化を起こした状態ですので、乳房痛や嚢胞が生じたり、良性のしこりができるのが特徴です。米国では女性の約30%に、このような乳房のしこりに痛みや嚢胞を伴う状態があって、乳腺症がよくみられる症状です。
女性の乳房に多少のしこりがあるのは珍しいことではなく、特にわきの下に近い乳房の外側上部によくみられます。女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの濃度は通常、月経周期とともに変動します。女性ホルモンの濃度が増加すると、乳腺や乳管が拡張して体液を保持し、乳房が張った状態になります。こうした変化は、女性ホルモンの濃度が減少すると元に戻ります。月経周期の特定の時期に乳房が張ったり敏感になったりするのも、ホルモンの濃度の変動が一因となっています。このようなホルモンによる刺激が繰り返されることによって、線維性・嚢胞性の変化が起こることがあります。乳腺症は症状と月経とが密接に関連していることから、卵巣ホルモンの周期的な変化に乳腺が次第に同調できなくなることが原因と推定されていますが、明らかな原因は不明です。
乳腺は子宮と同様に生殖器官のひとつですから、性ホルモンの影響を強く受けています。思春期になると卵巣機能の発達とともに乳腺が発育してきて、その頃には初潮も始まります。その後閉経までの期問、排卵を境に卵胞期と黄体期が交互に現われます。子宮では卵巣からの女性ホルモンの分泌の増加に伴って、内膜が肥厚・増殖し、妊娠の準備に入りますが、妊娠が成立しないとこのホルモンは低下し、内膜の剥離、すなわち月経が始まることはよく知られています。
この卵巣からのホルモンは、実は乳腺にも作用し、乳腺も授乳の準備を始めるのです。卵巣からのホルモン分泌が増加し、子宮内膜の増殖する時期に呼応し、乳腺も木の葉が生い茂るように、腺房や乳管が肥厚・拡張・増殖し、問質も充血状態となり、月経直前には乳房は平常時の30~40%も容積を増やすといわれています。こうした乳房の変化を、乳房の痛みや緊満感として自覚する人が多く見られ、月経前緊張症と表現することがあります。乳腺は月経周期に伴い、このような少なからぬ機能的、構造的変化を繰り返しており、妊娠や授乳によってその変化はさらに大きなものとなります。
乳腺が長年にわたって、卵巣ホルモンの影響下に増殖と萎縮を繰り返している間に、乳腺内に増殖をしている部分と萎縮、線維化している部分が混在するようになり、大小さまざまの硬結を触れるようになったものです。生理的変化の一環とみなすことができ、本来は病気としては扱われません。
乳腺症は性ホルモンの働きと、その影響によって乳腺に生じる生理的変化に密接な関連があります。乳腺の構造は、血液から母乳を抽出する腺房という部分、乳汁を乳頭まで誘導する乳管、これらの構造を支える間質から成り立っています。