女性不妊症の原因
1. 卵巣因子
卵巣からは約1カ月に一度卵子が排卵されますが、この機能がうまくはたらかないと妊娠しません。月経が不規則で1年に3~4回くらいしかなかったり、まったくない場合には排卵が起きていない可能性があります。基礎体温をはかって排卵しているかどうか確かめます。排卵は通常、月経開始から14日目頃に、卵巣から卵子が出ることです。ところが排卵障害のある女性だと、ホルモンの不調などによりうまく排卵が行えずに、未熟な卵子が誕生してしまいます。この状態を排卵障害といいます。ホルモン不調の具体的な例としては、卵巣を刺激するエストロゲン、プロゲステロンというホルモンの濃度が関係しています。エストロゲンの濃度が高くあるべきときに低かったり、プロゲステロンの濃度が高くあるべきときに低かったりすると排卵障害を起こしてしまいます。こうした障害は生殖機能をコントロールするしくみの一部がうまく働かなくなって起こるもので、視床下部(脳の1領域)、下垂体、副腎、甲状腺、生殖器などの関与が考えられます。たとえば、プロゲステロンは受精卵の着床に備えて子宮内膜を厚くするための女性ホルモンですが、これが卵巣から十分に分泌されないことがあります。また、視床下部がゴナドトロピン放出ホルモンを分泌しないことが原因で、このホルモンが下垂体を刺激し、排卵を起こすホルモン(黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモン)を分泌させるという一連の作用がうまく起こらず、排卵が生じない場合もあります。乳汁の分泌を促すホルモンであるプロラクチン値が上昇し(過プロラクチン血症)、排卵を起こすホルモンの値が低くなることもあります。プロラクチン値が上昇する原因としては、プロラクチン産生腺腫という下垂体の腫瘍(しゅよう)があります(通常は良性腫瘍)。排卵の障害はこのほか、多嚢胞性卵巣症候群、甲状腺の病気、副腎の病気、過度の運動、糖尿病、体重減少、肥満、精神的ストレスなどによっても起こります。卵子の供給が早く終わってしまい、閉経が早く訪れる場合もあります。
月経周期が不規則であったり、月経がない(無月経(月経の異常と不正出血: 無月経を参照))といった問題がある女性の多くは、排卵にも問題がみられます。規則的に月経があっても、乳房が過敏になる、下腹部が張る、気分が不安定になるといった月経前に特有の症状がない女性では、ときに排卵に問題がみられます。
2.卵管因子
卵管とは、卵巣から子宮へ卵子を運ぶ管のことです。この管は通常、2本あります。この部分に炎症が起こったり、卵管が何らかの理由でふさがれたりすると卵子が移動しにくくなる、または卵子が移動できなくなってしまいます。
卵管が炎症を起こすと周囲と癒着したり、中がつまってしまい、受精することができません。性感染症の際に細菌やクラミジアなどが子宮から卵管のほうへ上昇した場合や、人工妊娠中絶のあとの経過がわるかった場合などに、卵管炎が起こります。卵管の障害は、過去の感染症(骨盤内炎症性疾患など)、子宮内膜症、虫垂破裂、骨盤内の手術などが原因で生じることがあります。子宮外妊娠(子宮以外の場所で受精卵が発育すること)が卵管内で起きた場合も卵管損傷の原因となります。構造的な障害により卵管が閉塞することもあります。こうした障害としては、子宮や卵管の先天的な異常、子宮筋腫、子宮内や骨盤内の通常なら独立している構造の間に生じた瘢痕による癒着などがあります。クラミジアや淋病などの感染症は、卵管に炎症を起こして卵子を通りにくくさせます。また、卵管水腫はそれらの感染症と密接に関わった病気です。卵管の先端が閉じ、卵管の中に感染症で生じた膿や水が溜まってしまうのです。また、感染症を抱えている場合はパートナーに感染してしまい、更に不妊症になる確率が高くなってしまいます。
また、子宮内膜症は子宮以外のところに子宮内膜が出来る病気で、卵管に子宮内膜が出来た場合、卵管がふさがれてしまいます。このように、卵管に問題を抱えていると受精が出来なくなり、その状態が続くと不妊症へと繋がっていきます。
3.子宮内膜因子
妊娠の仕組みにおいて、重要なポイントとなるのが着床です。着床とは、受精卵が子宮に運ばれ子宮内に落ち着くことで、着床障害の場合、受精はするけれども子宮内に受精卵が落ち着かないため妊娠が出来なくなります。そのため、着床障害が起こると不妊症になってしまいます。
着床障害の原因は、代表的なものが2つあります。1つ目は、子宮が子宮発育不全であったり、奇形である場合です。子宮は胎児のときに作られますが、成長過程に異常があると奇形になったり発育不全のまま大人になります。そしてもうひとつは、子宮筋腫や子宮内膜症などにかかっている場合です。
子宮筋腫とは、子宮の筋肉層の中に腫瘍ができる病気で、成人女性のおよそ3割がかかっているといわれています。子宮筋腫は良性の腫瘍で転移することはほとんどありませんが、できる場所や大きさによって着床障害、ひいては不妊症を引き起こします。
排卵障害、卵管障害、着床障害という3つの障害からくる不妊症の原因がありました。もっとも多いのは、排卵障害ですが、卵管障害、着床障害のほかにもストレスやセックスレスなど様々な要素が不妊症の原因となることがあります。
4.子宮頸管因子
排卵の際には子宮の入り口にあたる頸管から粘液が出て、精子が子宮内に入りやすくなります。 粘液の量が十分でなかったり、粘液の中に精子の運動を妨害するような成分が含まれていると、精子の数は正常でも子宮の中に入ることができず、妊娠しにくくなります。子宮頸部(子宮下部の腟とつながる部分)の粘液は、普段は濃厚で精子が侵入できないようになっていますが、排卵直前になるとエストロゲン値の上昇により、この粘液が透明でさらさらになります。その結果、精子は粘液内を通って子宮から卵管に入っていけるようになり、受精が行われます。感染症などが原因で、排卵の時期になっても粘液の状態が変わらないと、妊娠しにくくなります。精子に対する抗体が粘液に含まれている場合にも、精子が卵子に到達する前に抗体によって殺されてしまうため、妊娠の可能性は非常に低くなります。
5.機能性不妊
機能性不妊とは、原因不明の不妊症です。検査結果に異常はないのに妊娠できないというもので、不妊症のカップルのうち1割はこの機能性不全に悩まされています。
機能性不妊の特徴は原因がわからないだけに、最も効果的な治療法が東洋医学であり、鍼灸治療だと思っております。
6.その他の原因
女性は男性と違って性感がなくとも性交は可能ですからインポテンスに相当する状態はありませんが、腟の入り口、その他の性器に異常があって性交ができない場合には妊娠しません。卵巣嚢腫や子宮筋腫なども不妊の原因になります。卵子の表面にある透明体を精子が貫通できないために不妊が起こることなどが、体外受精の研究からわかってきました。 妊娠のしくみの研究は年々進歩していますから、不妊の原因は将来さらに解明されるでしょう。
不妊症治療を受けているカップルでは、一方または両方が欲求不満や感情的ストレス、無力感、罪悪感を感じることがあります。希望を抱いては失望することを繰り返す場合もあります。感情的ストレスのため疲労や不安、睡眠障害、摂食障害、集中力の低下などが起こります。また、診断と治療に伴う経済的負担や時間的拘束が、夫婦の間で不和の原因となることがあります。こうした問題を軽減するには、医学的な問題がパートナーのどちらにあろうと、2人がともに治療のプロセスに関与し、情報を得ることが大切です。治療の成功率がどの程度であるかを把握し、また治療は成功するとは限らず、永遠に続けるわけにもいかないのを理解しておくことは、ストレスに対処する上で役立ちます。

